ピンインペーストとは

ピンインペースト(Pin-in-Paste、別名:Through-hole Reflow)とは、スルーホール部品(ピン付きコネクタなど)をリフローはんだ付けで実装する手法です。

従来、リード付き部品はフローはんだや手はんだ工程で実装していましたが、この技術を用いることで、表面実装(SMD)と同一のリフロー工程内でスルーホール部品も一括処理できるようになります。

ライン構成の簡素化、製造コスト削減、実装品質の安定化などのメリットから、車載ECUやインバータ、コネクタ実装基板などで急速に普及しています。

ピンインペーストの一般的な工程

  1. はんだペースト印刷
    スルーホール部にも十分な量のペーストを供給するため、専用の厚膜ステンシル(3Dステンシル)を使用します。
    穴の中にまでペーストを充填できる設計が重要です。
  2. 部品挿入
    コネクタやリード付き部品のリードをスルーホールに挿入。スルーホール用マウンターまたは手挿入が一般的です。
    ピン挿入時にペーストが押し出されないよう、ペースト物性や挿入速度にも配慮が必要です。
  3. リフローはんだ付け
    SMD部品と同様にリフロー炉に通し、加熱ゾーンでペーストが溶融し、リードとスルーホールパッドがはんだ付けされることで電気的・機械的接合が完了します。

設計上の技術的ポイント

ピンインペーストは従来のスルーホール実装と比較して特殊な設計要件があります。
以下の点に注意が必要です:

・はんだ量の確保:
スルーホール内とパッド部の両方を満たすには、通常のSMDより多量のはんだが必要です。
→ ステンシル開口の最適化(スロット形状、3D盛り)や、はんだペーストの粘性・粒度も選定のポイントです。

・リードの形状:
はんだ濡れ性を考慮し、丸ピンやフラットピンなど、ペーストが流れやすく表面積が確保できる形状が望まれます。

・スルーホール設計:
穴径、ランド径、ソルダーレジストクリアランスなどをピン径やペースト粘性とマッチさせることが必要です。
IPC規格(IPC-2221など)に準拠しつつ、適度なクリアランス(例:+0.15〜0.2mm)が推奨されます。

・ペースト落下・ブリッジ防止:
ペーストがピン挿入時に押し出されすぎると、隣接パッドへのブリッジや、実装不良の原因になります。
挿入力・ピン端形状・ペースト粘度のバランスがカギです。

車載コネクタにおけるメリットと適用例

車載用途では、コネクタやシールド付き端子、電源用高電流ピン付きコネクタなど、スルーホール構造が必要な部品が多く存在します。

ピンインペースト技術を活用することで、手はんだ工程の削減・自動化による安定品質の確保・リフロー設備の共通化といった大きな利点が得られます。

ローゼンバーガーでは、ピンインペースト対応を明示したスルーホール製品(例:HFM®FAKRA、RosenbergerHSD®、H-MTD®など)を展開しており、設計段階での部品選定と製造工程の最適化が可能です。

まとめ

ピンインペーストは、スルーホール部品のリフロー実装を実現する高度なプロセス技術です。

設計者にとっては、基板設計・部品形状・はんだペースト仕様・温度プロファイルなど、複数要素を同時に考慮する必要がありますが、実装の一貫性と生産性の向上に大きく寄与します。

車載用途では、信頼性試験(温度サイクル、振動試験、接触抵抗確認など)と組み合わせて、長期耐久性を重視した実装戦略の一環として活用が進んでいます。

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監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

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