【徹底解説!】OPEN Alliance Class 1 / Class 2 とは : 車載Ethernet設計における通信チャネル性能クラスとコネクタ選定の本質

目次

OPEN Allianceとは

OPEN Alliance(One-Pair Ethernet Alliance)は、車載Ethernet(Single Pair Ethernet)を中心に、物理層(PHY)、ケーブル、コネクタ、評価方法の整合を図る業界団体です。

OEM、Tier1、半導体メーカー、コネクタメーカーなどが参画し、「車載Ethernetを実装レベルで成立させる」ことを目的としています。

車載Ethernetは、もはや「CANの代替通信」ではありません。
ADAS、ゾーナルアーキテクチャ、Software Defined Vehicle(SDV)といった流れの中で、車両全体のデータ基盤そのものになりつつあります。

この中で設計者が必ず直面するのが、「どこまでの性能を前提に、配線・コネクタ・ECUを設計すべきか」という問いです。

この判断軸として、OPEN Alliance が整理しているのがClass 1 / Class 2 という性能クラスの考え方です。

OPEN Allianceにおける「Class」という概念の正体

まず強調すべき点は、Class 1 / Class 2 は規格番号でも、製品認証でもないということです。

OPEN Allianceが定義しているのは、ECUとECUを結ぶ通信チャネルをどのレベルの信号品質・EMC耐性で成立させるかという設計思想の共通言語です。

ここで言う「通信チャネル」とは、

・PHY
・PCB配線
・基板コネクタ
・インラインコネクタ
・ケーブルハーネス

をすべて含んだ電気的経路全体を指します。

 Class 1 / Class 2 は「部品」ではなく「システム要件」これが最重要ポイントです。

Class 1 の位置づけと設計思想

Class 1 は、車載Ethernetが量産フェーズに入り始めた時期に整理された、実用性重視の性能クラスです。

Class 1の設計的特徴

・比較的低い周波数帯を前提

・信号マージンに余裕がある

・配線・コネクタ設計の自由度が高い

・コスト最適化がしやすい

Class 1主な用途

・ボディ系ECU

・シャシー制御

・ゲートウェイECU

・比較的短距離・低負荷の通信

現在、国内の多くはClass 1思想で成立しています。

Class 2 が求められるようになった背景

一方でClass 2は、車載Ethernetの役割が質的に変化したことで必要になったクラスです。

Class 2が前提とする世界

・カメラ、レーダーなどの大容量データ伝送
・ECU統合による配線集約
・高密度ハーネス環境
・将来のマルチギガビットEthernet

この領域では、

・わずかなインピーダンス不連続
・シールドの途切れ
・コネクタ嵌合部でのモード変換

といった要素が、通信品質やEMCに直結します。

Class 2は、「対策で成立させる」から「構造で成立させる」への転換点と言えます。

Class 1 / Class 2 の比較

UTP / STP Class 1 / STP Class 2 の設計思想差

Classの違いは、ケーブルやコネクタ構造にも明確に表れます。

設計思想の整理

UTP
・シールドに依存せず成立
・車両レベルEMCで課題が出やすい

STP(Class 1)
・UTPを補強した妥協的構成
・ケーブル品質への依存度が高い
・周波数上昇でマージンが減少

STP(Class 2)
・360°シールド前提
・構造的にEMCを成立
・車両レベルでの再現性が高い

Class 2では、コネクタは「信号を通す部品」ではなく「EMC機能部品」として扱われます。

Class 2設計とH-MTD®コネクタの位置づけ

Class 2の考え方を理解すると、なぜ近年 H-MTD® が車載Ethernet用途で採用されやすいのかが自然に見えてきます。

H-MTD®は、差動伝送を前提に設計された車載Ethernet用インターフェースであり、Class 2レベルの通信チャネル成立を想定した設計思想を持っています。

H-MTD®Class 2と親和性が高い理由

・差動ペア構造により高周波での信号安定性を確保
・シールド連続性を意識した構造でモード変換を抑制
・コネクタ単体ではなく、チャネル全体での整合性を重視
・100BASE-T1用途では、UTP構成を含めた柔軟なシステム設計が可能

そのためH-MTD®は、「高速に対応できるコネクタ」というより、Class 2チャネルを成立させやすくするインターフェースと位置づける方が正確です。

海外OEMでClass 2前提設計が主流な理由

欧州・中国OEMでは、「今は低速でも、配線とコネクタはClass 2前提」という設計が一般化しています。

理由は、ECU更新時の再設計回避、将来の通信速度拡張への備え、EMC手戻りリスクの低減といった、長期的な設計合理性にあります。

まとめ ― Class 1 / Class 2を設計判断にどう活かすか

OPEN Alliance Class 1 / Class 2 は、通信速度そのものを区切る規格ではなく、
車載Ethernetの通信チャネル全体を、どのレベルの信号品質とEMC安定性で成立させるかを示す性能クラスです。

一般的に、Class 1は100BASE-T1を中心とした通信を想定し、既存アーキテクチャとの親和性が高く、設計自由度やコストバランスを重視した構成で成立しやすいクラスです。
現在も多くの量産車で採用されており、実務的に有効な選択肢であることに変わりはありません。

一方、Class 2は1000BASE-T1を確実に成立させることを前提とし、将来的なマルチギガビットEthernetへの拡張を見据えた通信チャネル性能クラスと位置づけられます。

高周波・高密度な車両環境では、EMCや信号品質を後付け対策で補うのではなく、ケーブル、コネクタ、PCB、PHYを含めた構造そのものによる安定性確保が求められます。

この設計思想の中で、コネクタは単なる接続部品ではなく、通信品質とEMC成立を左右する重要な要素となります。
H-MTD®のような差動Ethernet向けインターフェースが評価されているのは、Class 2の考え方と整合し、ゾーナルアーキテクチャにおける高密度・集中配線環境でも通信チャネルを成立させやすい特性を持つためです。

重要なのは、「今の通信速度で足りているか」ではなく、「この設計が将来、Class 2レベルまで無理なく拡張できるか」という視点でインターフェースや配線構成を選定することです。

Class 1 / Class 2を正しく理解し、通信チャネル全体で最適化を図ることが、再設計リスクを抑え、グローバルで通用する車載Ethernet設計につながります。

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監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

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