電食(Electrochemical Corrosion)とは?

水分や電解質が介在する条件で、金属に電位差が加わると腐食が促進される現象です。
狭義には異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)を指し、広義にはそれに加えて迷走電流腐食を含みます。
コネクタや電子部品においては長期信頼性を脅かす重要な劣化要因であり、設計・材料選定・環境管理が不可欠です。

電食の基本メカニズム

  異種金属接触腐食(ガルバニック腐食 / Galvanic Corrosion)
   異なる金属が接触し、電解液(水分・塩分など)が存在すると電位差により微小な電池が形成されます。
   この時 イオン化傾向の大きい金属(卑金属)が陽極となり腐食し、イオン化傾向の小さい金属(貴金属)は保護されます。

  迷走電流腐食
   直流電流が流れる環境に電解液が介在し短絡すると電流が流出する側(金属の陽極部)が同様の原理で腐食を起こします。

電食の原因

  ・異種金属の組み合わせ(イオン化傾向の差)

  ・意図しない電流の発生・通過

  ・水分・塩分などの電解質との接触

  ※「電位差」と「電解質」が揃うと発生。

コネクタ・電子部品での重要性

  主な発生要因:端子間の異種金属組み合わせ(例:銅+錫、銅+アルミ)

         結露、湿度変化、融雪剤(塩化カルシウム・塩化ナトリウム)などが電解液の存在。

  リスク:接触抵抗上昇、導通不良、断線、発熱、火災リスク。

対策

  材料選定:電位差の小さい金属を組み合わせる。(同種の金属が使えればリスク最小化)

  表面処理:めっきやコーティングで直接接触を防止。

  絶縁材の使用:樹脂やシール材で電気的接触を遮断。

  環境管理:湿度・温度制御、塩分や電解質の侵入防止。

  試験・検証:塩水噴霧試験、温度サイクル試験で耐性確認。

まとめ

電食は「静かに進行する劣化要因」であり、初期段階では気づきにくいが、長期信頼性を大きく損なう恐れがあります。 材質選定・表面処理・環境管理などにより金属部への電位差の発生、電解質の接触を抑える事が重要です。

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監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。