リーク電流(Leakage Current)とは

リーク電流(Leakage Currentまたは漏洩電流)とは、本来電流が流れてはならない絶縁部分や非導通状態の回路・端子間に、意図せず電流が流れてしまう現象です。

電流は微小ながらも、電子回路の誤動作や感電リスク、EMCトラブルの原因になるため、電気安全・機器信頼性・ノイズ対策の観点で極めて重要です。

特に車載分野では、高感度なセンサ信号や高速通信回路でμAレベルの電流変動が問題化するため、コネクタ選定・設計時における慎重な配慮が求められます。

一般的な発生源

リーク電流は、様々な電子部品や構造内で発生します。

半導体(トランジスタ、ICなど):オフ状態でも微小な電流が流れます(例:MOSFETのゲートリーク)
電源装置・ACアダプタ:筐体アースへの漏洩があり、絶縁が不完全だと感電のリスクがあります。
コンデンサ:理論上絶縁されていても、誘電体を介して微小電流が流れます。
高周波機器(スイッチング電源、モーター):浮遊容量経由で高周波成分が漏れ、筐体や大地へ流れることがあります。

車載コネクタにおける発生要因

車載コネクタでは、次のような要因でリーク電流が発生します。

・絶縁抵抗の劣化:高温・高湿・粉塵環境によって端子間・端子-ハウジング間の絶縁が低下。 
・汚損や結露  :内部への水分侵入により表面リークが生じやすくなります。
・沿面距離不足 :小型・高密度コネクタでは端子間が近く、リークしやすくなります。

測定方法と評価規格

リーク電流の評価には以下の試験が行われます。

・絶縁抵抗試験:DC500Vを印加し、絶縁抵抗が1,000MΩ以上あるかを確認(IEC 60512などに準拠)。
・耐電圧試験 :通常使用より高い電圧(例:1000V)を一時的に印加し絶縁破壊の有無を確認。
・使用機器  :高周波対応のリーク電流テスター、高感度クランプメーター(μA~mA級)、EMI測定器(スペアナ+LISN)などが用いられます。
・高温高湿・塩水噴霧後の再評価:実環境下での耐久性を検証する重要な評価手法です。

設計・選定時の対策

車載コネクタを選定・設計する際には、以下のポイントに留意してください。

・耐湿性材料の使用:PBT、PPSなどの高絶縁性・低吸湿材が有効。
・適切なアース処理・シール構造:IP67以上の防水構造とワイヤーシールにより、結露・湿気の影響を抑制。

まとめ

リーク電流は、車載コネクタの選定・設計において見過ごせないリスク要素です。

たとえ微小な電流でも、誤作動やEMI発生の引き金となり得るため、設計段階からの絶縁対策が重要です。

使用環境に応じた材料選定、試験規格に基づく評価、信頼性の高い製品選びを通じて、長期的に安全で安定した車載電装システムの構築に貢献することができます。

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監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

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