VSWR(電圧定在波比)とは

VSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)とは、高周波伝送路においてインピーダンスの不整合により発生する反射波の大きさを表す指標です。

理想的な伝送環境では、信号はすべて負荷に吸収され反射が発生しませんが、コネクタやケーブル、基板とのインターフェースでインピーダンスがずれると一部の信号が反射し、定在波が発生します。

このときの反射の程度を数値で表したものがVSWRであり、一般的に1.0に近いほど整合が取れており、信号劣化が少ない良好な状態を示します。

定義

ここで、Γ(ガンマ)は反射係数(Reflection Coefficient)であり、入力インピーダンスと基準インピーダンスの差から求められます。
※VSWRは常に1以上の値になります。

・VSWR = 1.0:完全整合(反射ゼロ)
・VSWR = 1.5:反射がややあるが実用範囲
・VSWR ≧ 2.0:整合不良であり、伝送損失・反射ノイズの懸念大

高品質な同軸コネクタ製品では、最大使用周波数帯域内でVSWR ≦ 1.3~1.5を保証するものが一般的です。

VSWRが重要な理由

高VSWR(=整合が悪い)場合の影響

・電力が反射して戻り、送信機を損傷する恐れ
・通信品質の低下(S/N比悪化、信号到達距離の短縮)

車載コネクタにおける設計・選定のポイント

VSWRを最小化するためには、コネクタ単体の設計に加え、実装環境とのトータルなインピーダンス整合が必要です。
以下の観点が特に重要です。

・インピーダンスマッチ設計:ケーブル・コネクタ・基板間を50Ω、75Ωまたは100Ωで統一
・高精度同軸構造     :中心導体・絶縁体・外部導体の寸法バランスが高周波整合に直結
・リターンロスの確認   :Sパラメータ測定によるS11特性をdB単位でチェック
・周波数帯域の確認    :使用する信号の最高周波数に対し、VSWR特性を保証していること

測定方法

VSWRは、主にネットワークアナライザ(VNA)によって測定され、S11パラメータ(反射特性)をもとに計算されます。

まとめ

VSWRは、車載における高周波信号品質を定量的に評価するための基本指標であり、同軸コネクタや高速伝送設計に欠かせない評価項目です。

コネクタ選定時には、使用帯域におけるVSWR特性を確認し、実装環境も含めたインピーダンス整合を意識することで、高信頼な車載通信ネットワークを実現することができます。

Rosenbergerのコネクタカタログ・お問い合わせ

FAKRAやH-MTDなどRosenbergerのコネクタ製品のカタログを無料でご覧いただけます。

監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

目次