フェライトコアとは?|電子機器に不可欠なノイズ対策部品の仕組みと用途

フェライトコアの基本

フェライトコアとは、フェライト(酸化鉄を主成分としたセラミック系の強磁性材料)で作られた磁心(コア)のことです。

高周波ノイズの吸収や、変圧器・インダクタの磁気回路に広く活用され、電子機器の安定動作を支える部品の一つです。

特徴的なのは、ノイズだけを選択的に減衰させ、必要な信号や電力はそのまま通すフィルタ機能を持っている点です。

これにより、システム全体のEMC(電磁両立性)向上に寄与します。

フェライトの性質

材質:鉄(Fe)に酸素(O)や金属元素(Mn、Zn、Ni など)を組み合わせて焼結したセラミックス

特性
 ・高い透磁率を持ち、磁束を通しやすい
 ・渦電流損失が小さく、高周波帯での特性に優れる
 ・絶縁性が高いため、導電性の金属コアに比べて高周波回路に適する

主な用途

ノイズフィルタ(EMI対策)
 ケーブルに装着する円筒形フェライトコアは、不要な高周波ノイズを吸収して抑制します。
 PCのUSBケーブルやACアダプタ、車載ECUの配線にも用いられています。

変圧器・インダクタの磁心
 スイッチング電源や高周波コイルのコア材として採用。
 金属コアよりも高周波領域での損失が少なく、効率的です。

アンテナや通信機器
 AMラジオで使用されるフェライトロッドアンテナに使われています。

フェライトコアの種類

Mn-Zn系(マンガン亜鉛フェライト)
 高透磁率で中低周波帯向け。トランスやインダクタで多用されます。

Ni-Zn系(ニッケル亜鉛フェライト)
 高抵抗で高周波特性に優れ、ノイズフィルタ用途に最適です。

ケーブル用フェライトコア(クランプフィルタ)の仕組み

ケーブルとノイズの関係

 ケーブルは単なる電線ですが、その電線に電流が流れるとアンテナのように高周波ノイズを拾ったり放射したりします。
 特にパソコン用のACアダプタ等は高周波スイッチングノイズを発生させやすく、そのノイズがケーブルを通って機器に侵入する事や、外へ放射される事で問題が発生します。

フェライトコアの働き

 フェライトコアは「高周波だけを邪魔する抵抗(インピーダンス)」として作用します。

 ・信号や電力(低周波・直流電流):フェライトにほとんど影響されないので、そのままケーブルを通過します。
 ・高周波ノイズ成分       :フェライト材の中で「磁化・消磁」が繰り返される → エネルギー損失が発生

 この損失はノイズのエネルギーを熱に変換して吸収し、その結果ケーブルを流れるノイズ電流が減ります。

フェライトコアの留意点

周波数依存性:100MHz~GHz帯のノイズに特に効果を発揮します。(逆に、100MHz以下のノイズに対しては効果が低減します。)

巻き付け回数:ケーブルを複数回通すとインピーダンスが増し、ノイズ抑制効果が大きくなる

目次

まとめ

フェライトコアは、「不要なノイズだけを取り除き、信号や電力はそのまま流す」賢いフィルタ部品です。

身近なUSBケーブルから、自動車の電子制御ユニット、通信機器まで幅広く利用され、電子機器の信頼性を支えています。

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監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

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