オープンアライアンス(OPEN Alliance)とその役割とは

OPEN Allianceは、車両向けの高性能なネットワーク技術、特にイーサネットを利用した通信技術の標準化を推進している団体です。
OPEN Alliance TC2OPEN Alliance TC9は、この団体の中でそれぞれ異なる技術的な課題に取り組み、車載ネットワークの性能や安全性を高めるために協力しています。
これらの標準は、将来的な自動車の通信ニーズに対応するために非常に重要で、特に自動運転車や高度な運転支援システム(ADAS)におけるデータ通信の要求を満たすために不可欠です。

目次

OPEN Alliance TC2/OPEN Alliance TC9とは

OPEN Alliance TC2(Technical Committee 2)

車載ネットワークにおけるEthernet通信の物理層に関する規格群のひとつで、100BASE-T1の通信チャンネル評価に焦点を当てた仕様です。
特にEthanet信号の整合性(Signal Integrity)やEMC(電磁両立性)の観点から、コネクタやケーブルなどの物理部品の性能要件を定義しています。

自動車におけるデータ通信の高速化に伴い、ECU間での信頼性の高いデータ伝送が求められるようになっています。
100BASE-T1は、1ペアの非シールドツイストペア(UTP)ケーブルを使用して最大100Mbpsの通信を実現するため、
軽量化・省スペース・低コストの観点から注目されています。

OPEN Alliance TC9(Technical Committee 9)

特にMultiGBASE-T1(2.5G/5G/10GBASE-T1)の試験仕様を策定し、車両メーカーや部品サプライヤーが高速ネットワークの品質を確保するための基準を提供しています。

ADAS(先進運転支援システム)と自動運転の発展により、高速・低遅延の通信が必要なため信頼性の高いネットワーク試験が不可欠であり、自動車メーカーや部品サプライヤーが共同で試験仕様を策定し、車載イーサネットの普及を促進するために制定されました。

TC2よりも高速なデータ通信(1G/2.5G/5G/10GBASE-T1)などの高速通信規格に対応するため、TC2よりも高周波数帯域での性能が規定されます。

TC2/TC9共に、通信を確実に成立させるためには、コネクタやケーブルの伝送特性、ノイズ耐性、共通モードの影響などを厳密に管理する必要があり、それらを体系的に規定しています。

主な技術要件(車載コネクタに関係する項目)

以下は、車載Ethernetコネクタ選定時に特に注目すべきパラメータです:

Characteristic Impedance(差動モード特性インピーダンス)
100Ω ±10%。TDR測定で評価されます。

・Insertion Loss(IL)
伝送損失は周波数ごとに定められTC2ではコネクタ単体では66MHzで最大0.075dB、TC9では≤ (0.01√f)db 1 ≤ f ≤ 600, frequency f in MHz(例として600MHzにて最大0.24dB)で規定されています。

・Return Loss(RL)
反射損失。TC2では66MHzで30.5dB以上、TC9では下記で規定されています。
※例として600MHzで20dB、200MHzにて30dB以下)

・LCL / LCTL(縦続変換損失/伝送損失)
共通モードノイズ抑制性能。TC2では200MHzまで、TC9では600MHzまでが測定対象。

・Alien Crosstalk(ANEXT/AFEXT)
隣接信号からの干渉。4-around-1構成での評価が推奨。

用途と選定時のポイント

OPEN Alliance TC2/TC9は、ECUコネクタ、インラインコネクタ、通信ケーブル全体(WCC)に適用される仕様です。

特に最大4つのインラインコネクタを含む通信構成を想定しており、車載Ethernetの長さ15m以内の構成において性能を保証するための指標を提供します。

コネクタ設計・選定時には以下の点を確認しましょう。

■コネクタ設計・選定のポイント

・S-Parameterに基づいた試験評価が行われているか
・TDR測定によるCIDMが規格内にあるか
・試験用フィクスチャにおけるリファレンスプレーンの定義が適切か
・高温環境での特性変動が管理されているか

これらを踏まえ、ローゼンバーガーではTC2/TC9に適合し、お客様のニーズに沿ったコネクタを用意しています。

※1000BASE-T1チャネルの電気的要件および測定仕様書の策定において、ローゼンバーガーは副議長として中心的な役割を担っています
(100BASE-T1、1000BASE-T1、Multi-Gig Ethernetなどの各種仕様の策定にも関与)

そのため、正確な測定手法を確認したい場合や、仕様変更が生じた際にも、ローゼンバーガーは常に最新の技術情報に基づいた最適な対応策をご提供できます。

コネクタやチャネルの評価方法、測定手順、仕様準拠に関するご相談など、詳細はローゼンバーガージャパンまでお気軽にお問い合わせください。

監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

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