STP(Shielded Twisted Pair)は、シールド(導電性フォイルや編組)を持った2芯のツイストペア線です。
ツイスト構造が本来もつ外来ノイズキャンセル効果に加え、シールドが電磁波を遮へいするため、10 Gbps級までの高速差動信号でも厳しい車載 EMC 規制をクリアしやすいのが最大の特長です。
ISO 19642-11 に規定される各種シールド付き ケーブルが代表で、ADASやLiDARセンサ、1000BASE-T1から Multi-Gigabit ( 2.5G/5G/10GBASE-T1 )のイーサネットなど幅広い採用例があります。
本解説では、車載イーサネットに採用した場合をメインに説明しております。

車載通信におけるSTPの活用シーン
・車載イーサネット(1000BASE-T1~10GBASE-T1)
ノイズが多い環境でも安定させるためシールド付きであるSTPが定番
・ADAS/高画質カメラ
映像を長距離で伝送しつつ、EMI(放射ノイズ)を抑えられるためシールド付きの STP が標準
・高精細ディスプレイ
大容量映像を長尺ハーネスで伝送してもフリッカや色ムラを防ぎ、EMI(放射ノイズ)を抑えられるためシールド付きSTPが事実上の標準。
STP(Shielded Twisted Pair)を車載イーサネットに採用する際のメリット/デメリット
区分 | メリット | デメリット |
---|---|---|
コスト | UTP 比でノイズ試験の再設計回数が激減し トータルコストを抑制 | UTP 比でケーブル単価が上昇 |
配線自由度 | ノイズ等による配線制約が少ない | UTP 比でケーブル単価が上昇 |
EMC | シールドで外部ノイズを遮へいしているため 周辺からの影響を受けづらい | – |
部品点数 | EMC対策の外装部品が不要 (H-MTD®コネクタを使用した場合) | UTP 比でシールド端子(コネクタ部品)が追加になる |
STP対応のローゼンバーガーコネクタ
H-MTD®(High-Speed Modular Twisted-Pair Data)
UTPケーブルとSTPケーブル両方に適用可能な次世代高速通信用差動コネクタ

・最大ビットレート:最大56 Gbps
・周波数範囲:DC ~ 20 GHz
・特長:100 Ωインピーダンス、モジュラーシステム(シングル、ダブル、クアッド、シックスハウジング)、CPAオプション、嵌合音対応、STP/UTPケーブル対応
・用途:100BASE-T1,1000BASE-T1,2.5/5/10G BASE-T1の車載イーサネット(Ethernet)伝送システム
ADAS、4Kカメラシステム、高解像度ディスプレイ、リアシートエンターテインメントなど
・参照:H-MTD® – High-Speed Modular Twisted-Pair Data – Rosenberger
詳しくはこちらの記事でも解説しています。

RosenbergerHSDt®
HSDインターフェースを使用し、STPに適用した差動コネクタ

・最大ビットレート:最大1 Gbps
・周波数範囲:DC ~ 1 GHz
・特長:100 Ωインピーダンス、HSDインターフェースを使用しSTPケーブルに適用、機械的キーイングとラッチング、誤接続防止のコーディング
・用途:100BASE-T1,1000BASE-T1の車載イーサネット(Ethernet)伝送システム、LVDS