ローゼンバーガー製防水コネクタ/LIM成形による高信頼防水技術

目次

はじめに│防水コネクタの重要性― 水侵入はリコールを招く重大リスク

車載カメラ、電子ミラー、レーダー、外装センサーなど、車外に配置される電子機器の数は近年急増しています。
これらのモジュールとECUをつなぐ通信ケーブルには、防水性能を備えた高信頼コネクタが必須です。

しかし、開発コストの圧力から安価な防水コネクタを採用した結果、水侵入による誤作動や短絡が発生し、最終的にリコールへと発展した事例がいくつもあります。
一見わずかなコスト削減でも、数ミリのコネクタシール部の設計差が、数十億円規模の損害に及ぶ可能性があります。

特に周辺監視カメラのような安全系システムでは、コネクタ1点の不具合が視界喪失や警告誤作動といった致命的な影響を及ぼします。
したがって、防水コネクタの品質確保は「コストダウンの対象ではなく、安全設計の基準」として捉える必要があります。

本記事では、ローゼンバーガーが採用するLIM成形による一体型防水構造を中心に、試験基準、そして選定時の実践的なポイントを詳しく解説します。

ローゼンバーガーの防水技術 ― LIM成形という革新

ローゼンバーガー製の防水コネクタは主に、一般的なOリング方式ではなく、LIM(Liquid Injection Molding)成形による一体型シーリング構造を採用しています。

これは液状シリコーンをハウジングに直接射出成形し、ゴムシールを一体化する技術であり、次のような特徴を持ちます。

一体構造によるシール精度の高さ

 LIM成形ではシール部がハウジングと化学的に接着し、一体構造を形成します。
 これにより、組立時や嵌合時のわずかなズレでもシール位置が変わらず、水密性が常に一定の状態で維持されます。
 金型でシールリブの寸法を精密に制御できるため、部品公差や作業誤差の影響を最小化できます。

長期安定性と耐環境性

 液状シリコーンは温度変化や紫外線、オゾン、湿度に強く、経年による劣化が少ない素材です。
 Oリングのように圧縮永久歪みや硬化が生じにくく、長期間にわたり防水性能を維持します。

自動化とバリレス構造

 Oリングのように手作業で装着する工程が不要で、自動成形ラインで完結します。
 これにより人為的な組立誤差や装着忘れがなく、安定した品質を実現します。

Oリング方式とローゼンバーガー防水コネクタ構造比較

防水性のばらつき

・従来型のOリング方式:シール位置が変動しやすく防水性にばらつきが生じやすい
 嵌合時の位置ずれやクリアランスのばらつきにより、Oリングの圧縮量が変化。
 結果として、コネクタ個々で防水性能が異なります。

・ローゼンバーガー防水コネクタ構造:シール位置が変動せず防水性にばらつきが生じずらい

異物挟み込みによる影響

従来型のOリング方式・・・異物挟み込みにより防水性低下

 製造ラインや組立工程で異物が付着した場合、水路が形成されてしまい、微量でも侵入リスクが発生。

・ローゼンバーガー防水コネクタ構造:リブ多重構造により異物挟み込みによる影響が小さい

 シール部に3本の圧縮リブを備え、1本が異物で影響を受けても残り2本が止水を維持します。

ばらつきの少ない品質再現性

成形寸法は金型管理下にあり、量産時も設計値どおりの精度を保ちます。

結果として、バラつきも少なく非常に安定した防水性を確保しております この構造的アプローチこそが、ローゼンバーガー防水コネクタの大きな優位性です。

実機試験で実証された防水安定性

LIM成形とOリング構造の性能差は、実機試験でも明確に示されています。
比較試験では、両構造のFAKRAコネクタを塩水を用いた静水圧環境下で評価。

LIM成形タイプは、すべての試験サンプルで漏水が確認されず、圧力負荷後も安定した状態を維持しました。

一方、Oリング構造では、部品ばらつきや組立誤差の影響で、一部サンプルに浸水が発生。
位置ずれが致命的な結果を招くことが分かりました。

この結果は、防水信頼性を「部品精度」だけに頼るのではなく、構造的に保証する設計思想が求められることを示しています。

5.防水試験の基準と評価項目

防水コネクタの性能評価では、IPコード(IP67~IP69K)や自動車規格(JASO/USCAR-2など)に基づく試験が用いられます。

代表的な試験項目は以下の通りです:

ローゼンバーガーの防水コネクタは、IP69Kをはじめとする国際的防水規格(ISO 20653/DIN 40050-9)に適合しており、USCAR-2およびLV214、さらに主要OEM(欧州・日本・北米)の個別試験要求をクリアしています。

まとめ│信頼を生むのは“構造”と“実証”

車載カメラや外装センサーなど、水分や温度変化に晒される領域では、コネクタの防水性能がシステム全体の信頼性を決定づけます。

安価な防水コネクタを使用した場合、経年変化や製造ばらつきによって水侵入が起こり、短絡・腐食・通信断を招くことがあります。

結果として、リコールやブランド信頼失墜といった甚大な損害につながるケースも少なくありません。

ローゼンバーガーの防水コネクタシリーズ(FAKRA®、HFM®、RosenbergerHSD®、H-MTD®、RMC®)は、LIM成形による一体シーリング構造を採用することで、Oリング方式の課題である「位置ずれ」「異物混入」「経年劣化」による性能低下を根本から解消しています。

さらに、これらの製品はIP69Kをはじめとする国際防水規格(ISO 20653/DIN 40050-9)に適合し、USCAR-2・LV214および各OEM独自の防水・耐環境試験もすべて満足しています。

今後、車両の電装化がさらに進み、カメラやセンサーが車外に配置される領域が拡大する中で、「どのコネクタを選ぶか」は安全設計上の重要な判断になります。 

防水性能はコストではなく、安全品質で選ぶ時代へ。
ローゼンバーガーは、その選択に確かな根拠を提供します。

Rosenbergerのコネクタカタログ・お問い合わせ

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監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

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