プレスフィット端子(Press-Fit Terminal)とは、はんだを使わずにプリント基板(PCB)へ圧入して電気的に接続する端子技術で、車載用高速伝送モジュールやECU、センサモジュールなどにも広く応用されています。
専用のスルーホールに圧入することで、端子のばね応力により安定した電気接触を確保します。
はんだレス接続により環境負荷を軽減しつつ、工程の簡素化や高密度実装に貢献できる点から、欧州を中心に環境規制対応として注目されています。

プレスフィット端子の主な特徴
・はんだレスで工程を簡素化
熱源や前処理工程が不要。リフローやフロー工程を省けるため、実装工程の効率化と省エネルギー化が可能です。
・高密度化を実現
はんだパッドやランドのサイズ制限が緩和され、周囲の部品配置自由度が向上。モジュール小型化に寄与します。
・低環境負荷・鉛フリー対応
鉛フリーはんだの信頼性課題を回避でき、REACH・RoHS規制などのグローバル環境基準にも適合。
・熱ダメージの回避
熱による基板変形やはんだクラックといった熱起因不良が発生せず、熱疲労への懸念が不要。
車載での用途
・エンジンECU・ボディECU・パワートレイン制御モジュール
・車載コネクタ一体型基板
・ドライバICモジュール、レーダーモジュール
・差動伝送系モジュール(車載Ethernet、LVDS)
PCB端子をはじめ様々な電装部品がプレスフィット端子に置き換え可能であり、特に鉛フリーはんだの脆弱性(クラック、ボイド、接合界面劣化)を懸念する用途において、プレスフィット技術が有効です。
技術的な留意点
・専用の圧入装置が必要
圧入のための上下治具が必要で、ピンの座屈防止などの配慮をした治具設計が必要。
またピン数が多い場合はトン数の大きい圧入装置が必要。
・再作業不可
一度圧入した端子は抜き取り不可。修理や再利用の際には基板ごとの交換になるケースもあります。
・ピン数・ピッチに応じた荷重設計が必要
端子の数量が多い場合、圧入装置のトン数も高くなり、設備負荷が大きくなります。
まとめ
プレスフィット端子は、はんだ不使用による信頼性と環境対応の両立を可能にする技術として、今後の高密度車載モジュールにおいて重要な選択肢となります。
従来のはんだ接続の信頼性・互換性を維持しつつ、鉛フリー化・省エネ・製造効率の向上を求める市場動向にマッチしており、設計初期段階からの最適な選定が求められます。

