自動車の電子化が進む中で、通信速度の高速化と信頼性確保の両立は、車載ネットワーク開発の重要課題です。
ローゼンバーガーは、FAKRA、HFM®、RosenbergerHSD®、H-MTD®、RMC®といった主要な車載用コネクタに対応する高精度テストアダプタを自社開発し、設計・評価・量産のすべての工程で活用可能な測定インフラを提供しています。
これらのアダプタは単なる治具ではなく、信号品質（SI）や電磁両立性（EMC）を評価するための標準化されたリファレンス機器です。
本記事では、ローゼンバーガーが提供する車載データコネクタ性能測定用アダプタの製品群の構成・特長・用途・測定例・開発背景について詳しく解説します。
市場背景と技術的要求
近年、自動車ではカメラやセンサーの増加、インフォテインメント機能の高度化などにより、車内ネットワークの伝送データ量が急増しています。
車両には数十mを超えるケーブルと数十個に及ぶ高周波コネクタが搭載され、高速・大容量のデータ通信が必須となっています。
こうした状況下で、自動車業界では各部位をモジュール化した「ビルディングブロック戦略」が推進され、複数ベンダーからの調達やセカンドソース化が前提とされています。
このため、最悪ケースまで考慮した精緻なシミュレーションによって、配線全体の信号品質限界を統一的に評価し、ASIL（自動車安全整合性レベル）やFIT（故障率）評価につながる機能安全を確保する必要があります。
その結果、自動車用コネクタ専用の高精度テストアダプタを利用した測定・検証は、開発から量産・品質保証にいたる全工程で欠かせないものとなっています。
ローゼンバーガーはこれに対応し、FAKRA、HFM®、RosenbergerHSD®、H-MTD®、MTD®といった同軸および差動の車載コネクタシリーズ用のテスト機器・アクセサリを提供しております。
これらは、OEMやTier1が求める「確実な信号評価」と「安全性検証」を両立する、車載通信の要となるテストソリューションです。
ローゼンバーガーは、OPEN AllianceやAutomotive SerDes Alliance(ASA)といった標準化団体の測定セットアップ定義にも貢献しており、それに基づいて自社の測定用アダプタポートフォリオを構築しています。
そのため、お客様の用途に応じた多様なテスト装置を直接ご提供することが可能です。
テスト機器（アダプタ、ボード、測定キット）
ローゼンバーガーのテストアダプタ群は、全主要コネクタシリーズに対応し、広帯域・高再現性の測定を実現します。
FAKRAシリーズ
・帯域 ：DC〜6 GHz（50 Ω同軸）
・代表製品（テストアダプタ）：03K159-K20S3（RPC-3.50 female–FAKRA JACK）
・キャリブレーションキット：59CK010-150
HFM®シリーズ（High-Speed FAKRA Mini）
・帯域 ：DC〜20 GHz（50 Ω同軸）
・代表製品（テストアダプタ）：02K1AM-KA0S3 （RPC-2.92 female – HFM® JACK）
・評価ボード ：PCB-T2503-SB-01 （3×RPC-2.92 female – 1×HFM® PLUG AMS29A-40MZ5-Y ）
・キャリブレーションキット ：AMCK010-150_s1
H-MTD®／MTD®シリーズ
・帯域 ：DC〜20 GHz（100 Ω差動）
・代表製品（テストアダプタ）：02K3E6-K00S5 （2× RPC-2.92 female – 1 × H-MTD® JACK）
02K3E7-K01S5 （2× RPC-2.92 female – 1 × MTD® JACK）
・評価ボード ：PCB-S3401-SB-01（4×RPC-2.92 female – 1×H-MTD® PLUG E6S20A-40MT5-Y ）
・カプラーキット ：DCDP-H-MTD-1G／DCDP-MTD-1G（ISO 11452-4／IEC 62153-4-7準拠）
・ケーブル測定キット：TCS-HMTD-10G（リファレンス長差動ケーブル）
RosenbergerHSD®シリーズ
・帯域 ：DC〜6 GHz（100 Ω差動）
・代表製品（テストアダプタ）：02K1D4-K00S3 （4×RPC-2.92 female → 1×HSD JACK）
・評価ボード ：PCB-L1501-SB （4×RPC-2.92 female – 1×HSD PLUG ）
RMC®シリーズ
・帯域 ：DC〜9 GHz（50 Ω同軸）
・代表製品（テストアダプタ）：02K1BM-K00S3 （RPC-2.92 female – RMC® JACK） 02K8BM-K00S3 （4 × RPC-2.92 female – 1× RMC® JACK ）
コネクタテストアダプタ使用例（車載イーサネット：H-MTD®コネクタ）
使用する測定環境（例：ネットワークアナライザ、オシロスコープ、EMC測定システムなど）の構成や目的に応じて、最適なアダプタ・ボード構成や測定方法を推奨しています。
ローゼンバーガーだけが実現できる理由 ― 車載コネクタ測定アダプタを支える高周波設計と精密加工技術
ローゼンバーガーが提供する車載用テストアダプタは、単なるコネクタ治具ではありません。
それは、テスト＆メジャーメント（T&M）分野で70年以上にわたり培われた高周波技術と精密加工技術の結晶です。
テスト＆メジャーメントのDNA
ローゼンバーガーはもともと、SMA、RPC-2.92、RPC-3.50などの計測用高周波コネクタを製造する世界的リーダーとして発展してきました。
これらは研究所や通信機器メーカーで使用される高精度計測コネクタであり、同社は早くからGHz帯域における電気特性の再現性と機械的同心度の極限制御を実現してきました。
このノウハウが車載分野に展開された結果、FAKRA、HFM®やRosenbergerHSD®、H-MTD®などの車載高速コネクタに加え、その性能を正確に測定・評価するための専用アダプタも同時に開発可能となっております。
精密加工技術
ローゼンバーガーは、EMC測定で世界標準となっている「Tube-in-Tube法」対応治具の製造も行っています。
この技術分野では、導体の真円度・同心度・表面粗さが測定精度に直結するため、μm単位での寸法公差を維持できる超精密切削・表面処理技術が不可欠です。
このような要求を満たせるメーカーは極めて限られており、機械加工からメッキ、検査までを内製化しているローゼンバーガーだけが可能な領域と言えます。
他社が追随できない理由
多くの自動車向けコネクタメーカーの多くは、あくまで量産品としてのコネクタ開発・供給に特化しており、「測定アダプタを自社で設計・製造する」ためのT&M技術基盤を持ち合わせていません。
例えば、同軸の位相整合・反射損失の最小化、差動線路のSパラメータ再現など、測定器と直結する領域ではRF専業メーカーの知見が不可欠です。
そのため、一般的なコネクタメーカーが自動車向け評価治具を作成しても、“見た目は似ていても信号品質が確保できない”という問題が発生し、実際の規格試験には使用できません。
ローゼンバーガーは、計測分野の知見＋車載分野の量産技術を両立している唯一のメーカーです。
これにより、他社では不可能な「製品と測定治具の一貫開発」が可能となっています。
国際標準化への深い関与
ローゼンバーガーは、OPEN Alliance TC9、Automotive SerDes Alliance (ASA)、USCAR-49、IEC 62153-4-7などの標準化活動に積極的に参画しています。
これにより、試験手順・評価基準の策定段階から技術的要件を理解し、規格に完全準拠した測定アダプタをいち早く製品化できます。
競合他社の製品開発に対し、標準書の解釈・シミュレーション精度・フィクスチャ特性の再現性で必ず差が生じます。
開発から量産までの一貫体制
ドイツ本社のT&M部門を中心に、日本・中国・アメリカの拠点が連携しており、顧客ごとの評価設備・測定環境に合わせたカスタマイズ設計・製造が可能です。
これにより、OEMやTier1各社で異なる測定装置でも同一のリファレンス条件を再現できる体制を構築しています。
まとめ（高速車載データコネクタ向けテストアダプタの価値）
自動車の電子化が進む現在、車載コネクタの信号品質やEMC特性を正確に測定することは、製品の安全性と信頼性を左右する重要な要素です。
車両内通信の高速化・大容量化が進むなかで、FAKRA、HFM®、H-MTD®、RosenbergerHSD®、RMC®といった各種高速車載コネクタを適切に評価するためには、高精度な測定アダプタと評価ボードが欠かせません。
ローゼンバーガーは、これらのニーズに応えるため、開発・評価・量産のすべての工程で共通利用できるテストアダプタ環境を提供しています。
その背景には、同社が長年にわたり培ってきたテスト＆メジャーメント（T&M）分野での高周波技術と精密加工技術があります。
さらにTube-in-Tube法に対応したEMC測定治具の製造や、OPEN Alliance／ASAなどの標準化活動への参画によって、国際規格に完全準拠した測定体系を確立しています。
ローゼンバーガーは「測定基準そのものを創るメーカー」として、製品と測定治具を一貫して開発できる世界的にも稀有な存在です。
今後、車載通信が10GBASE-T1などさらなる高速化へ進む中で、正確な測定を支えるリファレンスアダプタの重要性は一層高まります。
ローゼンバーガーのテストアダプタシリーズは、その信頼性・精度・再現性において、業界の“測定基準”を大きくリードしています。
