EMC(Electromagnetic Compatibility)/EMI(Electromagnetic Interference)とは?車載コネクタに求められる遮蔽・結合減衰と測定法

EMC(Electromagnetic Compatibility)は「電磁両立性」と訳され、電子機器が他の機器に干渉せず、逆に外部からの干渉も受けずに正常動作する能力を意味します。
一方、EMI(Electromagnetic Interference)は電磁干渉そのものであり、設計者にとっては「防ぐべき対象」です。

車載環境では、複数の高電圧・高速信号機器(ECU、インバータ、モーター、カメラなど)が密集して動作しており、EMIの影響を防ぐための設計的なEMC対策が不可欠です。

目次

遮蔽減衰量(Shielding Attenuation)とカップリング減衰量(Coupling Attenuation)の違い

遮蔽減衰量(Shielding Attenuation)とカップリング減衰量(Coupling Attenuation)の違いは以下です。

Shielding Attenuation(SA:遮蔽減衰量)

 外部からの電磁波をどれだけ遮断できるかを示す指標
 高いSA(例:90dB)は、シールドが強力に外部ノイズをブロックしていることを示す
 測定:IEC 62153-4-4準拠(リターントランスミッション)

Coupling Attenuation(CA:結合減衰量)

 内部のノイズ源(例:信号線)からの漏洩が、どれだけ外部に結合しにくいかを示す
 主にコモンモードノイズの抑制性能に関連
 測定:IEC 62153-4-3準拠(Tube-in-Tube法)

差動 と シングルエンド伝送のEMC特性

差動伝送

 2本の信号線に対して逆相信号を送信し、差分でデータを検出共通モードノイズをキャンセルできるため、EMIに強い
 高速通信におけるノイズ抑制・放射低減に効果的

 例:LVDS、FPD-Link、GMSL、MIPI CSI-2, ASA Motion Linkなど

シングルエンド伝送

 1本の信号線と共通のGNDを使用するため、ノイズを受けやすく、放射も大きいためEMC対策が必須
 主に低速信号(CAN、LIN、アナログ)で使用される

測定方法:IEC 62153によるTube-in-Tube

IEC 62153-4-3および-4-4は、車載ケーブル・コネクタのシールド性能を正確に評価するための国際規格です。

Tube-in-Tube法とは?

試験体(ケーブルやコネクタ)を外部金属管(Outer Tube)で覆い、内側に信号注入。
シールドを通過して漏れる電磁波を測定し、結合減衰量(CA)や伝送インピーダンスを評価します。
4GHz以上の高周波帯でも安定した測定が可能です。

この方法により、実環境に近い条件でEMC性能を定量化できます。

車載コネクタ設計への応用とローゼンバーガーの製品例

ローゼンバーガーでは、IEC 62153準拠の試験を実施し、高いSACA値を保証した製品設計を提供しています。

代表的製品とEMC設計

HFM®High-Speed FAKRA-Mini
 28Gbps対応、IEC 62153準拠、Tube-in-Tube測定により80dB超のCAを実現

H-MTD®
 100Ω差動用、EMC性能と伝送品質を両立。ASA Motion Link/GMSL3向けに最適

HSD
 シールドクワッド構造により、CAN-FDや中速差動伝送におけるEMI抑制効果が高い

まとめ

EMC/EMI対策においては、Shielding Attenuation(外部ノイズ遮断)とCoupling Attenuation(内部ノイズ漏洩防止)の両立が重要です。
その評価にはIEC 62153-4-3/-4-4によるTube-in-Tube測定法が有効であり、これを基準とした設計・検証が信頼性の高い車載通信システム構築に不可欠です。

ローゼンバーガーのHFM®H-MTD®は、これらのご使用EMC基準に対応した次世代コネクタとして、差動/同軸どちらの設計にも対応可能です。

必要に応じて、図付きホワイトペーパー、規格比較表、設計チェックリストの作成も承ります。

詳しく知りたい用語や関連テーマがあればお知らせください!

監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

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