ディファレンシャルモード(Differential Mode)とは、2本の信号線に逆位相の電圧信号を流し、その差分で情報を伝送する状態や動作モードを指します。
これは、車載カメラシステムやADAS、イーサネット(100BASE-T1 / 1000BASE-T1)など、ノイズに強い通信が求められる領域で重要な役割を果たします。
差動伝送とは?
まず、「ディファレンシャルモード」が何を指すかを理解するためには、差動伝送(Differential Signaling)という通信方式を知る必要があります。
差動伝送とは、2本の信号線の電圧差でデータを伝える通信方式です。
たとえば、片方の線に+1V、もう片方に−1Vの信号を流すと、その差(2V)がデータとして認識されます。

これにより、外部から同時に加わるノイズ(コモンモードノイズ)を受信側で打ち消すことが可能となり、高速かつ長距離の伝送を安定して実現できます。
このとき、2本の信号線間で実際に流れている信号が「ディファレンシャルモードの信号」です。
ディファレンシャルモードノイズとは?
一方で、「ディファレンシャルモードノイズ(Differential Mode Noise)」とは、差動信号と同じ方向性・経路で発生するノイズ成分を意味します。
これは、2本の信号線に対して逆位相で侵入するノイズであり、差動信号そのものに重畳してしまうため、受信側でキャンセルできません。
発生の要因には:
このようなノイズは信号歪みやデータエラーの原因となるため、ディファレンシャルモードノイズの抑制はEMC設計上の重要課題です。
コモンモードノイズとの違い
コモンモードノイズ(Common Mode Noise)は、2本の信号線に同じ位相・同じ方向に流れるノイズです。外部から同時に加わる電磁波やグランドループなどが原因です。
一方、ディファレンシャルモードノイズは、2本の信号線に逆向きに作用するノイズで、差動信号そのものを乱します。
車載通信設計での対応
車載システムにおいては、差動伝送の信号品質を守るため、コネクタ・ケーブル・基板の設計において「対称性」と「ペアの均一性」が重視されます。
たとえば、ローゼンバーガーが提供するRosenbergerHSD®コネクタやH-MTD®コネクタは、100Ωの差動インピーダンスに最適化されており、ノイズ対策やスキュー最小化に優れた構造を持っています。

ケーブル面では、ツイストペア(STP)やツイストクアッド(STQ)構造の採用が、ディファレンシャルモードノイズの抑制に有効です。