UTP(Unshielded Twisted Pair)は、シールドを持たない2芯のツイストペア線です。
ツイスト(より合わせ)構造により、差動信号が外来ノイズを打ち消し合うことで、一定のEMC性能を確保しています。
ISO 19642(車載ケーブル規格)でもシールドの有無を問わずツイストペアを標準メディアと位置づけており、CAN FDやFlexRay、100BASE-T1のイーサネットなど幅広いバスで採用例があります。
本解説では、車載イーサネットに採用した場合をメインに説明しております。

車載通信におけるUTPの活用シーン
・CAN FDやFlexRayなどの既存規格
低~中速の通信では、シールドなしでも十分な性能を確保できるため、これらの規格での採用実績が豊富です。
・車載イーサネット(100BASE-T1/1000BASE-T1)
1ペアのUTPケーブルで双方向通信を実現。軽量化と配線簡素化が可能です。
(1000BASE-T1は、周辺機器によるノイズの影響やケーブル間のクロストークの悪化により採用が困難な状況から、STPがメインとなっている)
・次世代ゾーナルアーキテクチャ
PoDL(Power over Data Line)を活用し、データ通信と電源供給を一本化(採用範囲はまだ限定的)
UTP(Unshielded Twisted Pair)を車載イーサネットに採用する際のメリット/デメリット
区分 | メリット | デメリット |
---|---|---|
コスト | シールド材(編組線)・シールド端子(コネクタ部品)が不要 → 材料費と圧着工数を削減できる | 追加のEMC部品(コモンモードチョーク、フェライト、銅箔テープ等)を後付けせざるを得ない場合、結果的にコスト逆転することもある |
重量・寸法 | シールド材(編組線)・シールド端子(コネクタ部品)が不要 → 材料費と圧着工数を削減できる | シールドで機械補強されないため、引張・振動ストレスに少し弱い 長尺やエンジンルーム配線ではクランプ設計に注意が必要 |
配線自由度 | シールド材(編組線)が無いため、柔軟で取り回しが良い | 配線経路によりノイズなど周辺部品の影響を受けやすい 複数のUTPを束ねるとクロストークが悪化するため、ハーネス経路の自由度が下がる |
EMC | 差動信号が自己キャンセルするため、 低速~中速(CAN FD・100BASE-T1)なら対策しやすい | 高速域(1000BASE-T1 以上)では放射・感受性が急増 車両搭載時に周辺部品の影響を受けやすく、STPへ切り替えるケースが多い |
部品点数 | シールド端子(コネクタ部品)が不要 | EMC課題対応でEMC対策が必要になる可能性がある |
UTP対応のローゼンバーガーコネクタ
MTD®(Modular Twisted-Pair Data)
UTPケーブル専用に開発されたイーサネット用差動コネクタ

・最大ビットレート:最大1 Gbps
・周波数範囲:DC ~ 1 GHz
・特長:100 Ωインピーダンス、UTPケーブル専用イーサネットコネクタ、コンパクト設計、低クロストーク
・用途:100BASE-T1および1000BASE-T1の車載イーサネット(Ethernet)伝送システム、車載ネットワークの最適化
H-MTD®(High-Speed Modular Twisted-Pair Data)
UTPケーブルとSTPケーブル両方に適用可能な次世代高速通信用差動コネクタ

・最大ビットレート:最大56 Gbps
・周波数範囲:DC ~ 20 GHz
・特長:100 Ωインピーダンス、モジュラーシステム(シングル、ダブル、クアッド、シックスハウジング)、CPAオプション、嵌合音対応、STP/UTPケーブル対応
・用途:100BASE-T1,1000BASE-T1,2.5/5/10G BASE-T1の車載イーサネット(Ethernet)伝送システム
ADAS、4Kカメラシステム、高解像度ディスプレイ、リアシートエンターテインメントなど
・参照:H-MTD® – High-Speed Modular Twisted-Pair Data – Rosenberger
詳しくはこちらの記事でも解説しています。
