車載用のSTQ(Shielded Twisted Quad)ケーブルは、2006年にローゼンバーガーと欧州主要自動車メーカーと共同で定義・開発した、4芯スタークアッド構造のシールド付き差動ケーブルです。
STQは 4 本の導体(=2ペア差動線)を十字状により合わせ、互いの磁界・電界を相殺したうえで、その外側を 360°シールド(アルミフォイル+編組など)で覆った 100 Ωの伝送ケーブル です。
2チャネル差動信号や映像+電源を1本でまとめられるのが特徴です。

車載通信におけるSTQの活用シーン
自動車内の高速データ通信(カメラ映像、インフォテインメント、ADAS関連通信など)の要求に応えるために採用が進んでおり、
同軸ケーブルと比べて耐ノイズ性に優れ、大容量データを安定高速に伝送できるメリットがあります。
・ADASカメラ/センサ
高精細映像(4K/60fpsなど)を安定して伝送するため、ノイズ耐性とクロストーク抑制に優れたSTQが採用されています。
・高速ディスプレイ(AR-HUD・後席4Kモニター)
大容量映像データを低遅延・低ノイズで伝送できるため、STQが推奨されています。
・車載USB・LVDS
2チャネル差動信号や映像+電源を1本でまとめられる構造が評価され、STQが標準的に使われています。
STQケーブル対応のRosenbergerHSD®コネクタ(High-Speed Data Connector System)

・最大ビットレート:最大8 Gbps
・周波数範囲:DC ~ 6 GHz
・特長:100 Ωインピーダンス、STQ(Shield Twist Quad)ケーブル対応、機械的キーイングとラッチング、誤接続防止のコーディング
・用途:LVDSカメラ、USB接続、車載イーサネット(Ethernet)、Firewire(IEEE 1394)、デジタルインフォテインメントなど
・参照:RosenbergerHSD® – Rosenberger
RosenbergerHSD®コネクタは、STQケーブルの専用コネクタシステムとして、2007〜2008年頃から実車搭載が始まり、ナイトビジョンカメラ、サラウンドビュー、車載ディスプレイ(ナビ等)といった用途でBMWやVWグループの車両に採用されました。
また、HSDインターフェースは、車載USBやLVDS、FPD-Linkなど高速・リアルタイム伝送に適し、市場標準として定着しています。
さらに、1ペアで高速映像を伝送し、もう1ペアでカメラ制御信号や電源を供給するといった「ワンケーブルソリューション」も可能で、ハーネス点数の削減や軽量化に貢献しています。
このように、ローゼンバーガーはHSDコネクタとSTQケーブルの実用化と市場投入を業界で最も早く実現した企業であり、現在の車載高速通信の標準技術の基盤を築いた存在といえます。