フローティングコネクタの定義とは
フローティングコネクタとは、嵌合時にコネクタ自体がわずかに動く(浮く)ように設計されたコネクタを指します。
固定されたコネクタと異なり、X・Y・Z方向や角度方向に一定の遊び(可動範囲)を持ち、相手側コネクタとの位置ずれや組付け誤差を吸収することができます。
一般的には「公差吸収コネクタ」や「位置補正機構付きコネクタ」と呼ばれることもあります。

なぜフローティングコネクタが必要なのか?
組付け誤差の吸収
車両の量産工程では、基板や筐体に取り付けられる複数の部品間で微小な位置ずれが発生します。フローティング構造により、このズレを吸収し、確実な嵌合を実現します。
応力緩和
固定構造では、組付け時や使用中の振動で端子や基板にストレスが集中し、破損や接触不良の原因となります。フローティング構造はこれを緩和します。
信頼性向上
特に車載用途では振動・熱膨張・組立誤差が避けられない場合、フローティングコネクタの採用により長期的な安定性が確保されます。
フローティング機構の特徴
可動範囲
一般的には ±0.3〜0.5 mm 程度の移動や数度の傾きに対応。
嵌合力の低減
自然な位置補正により、嵌合作業の負荷を軽減。
接点の安定確保
可動しても端子の接触圧は確保されるよう設計。
懸念点と対策
フローティング構造は便利である一方、吸収機構の設計によっては性能劣化のリスクもあります。
たとえば、簡易的に「Zスプリング」のようなばね構造で位置ずれを吸収する方式では、ばねの変形によって電気性能にばらつきが生じやすく、長期使用では接触圧が不安定となり、伝送特性や信頼性の低下につながる懸念があります。
ローゼンバーガーでは、この課題を回避するため、高周波特性を維持したまま公差を吸収できる独自のフローティング機構を採用。
これにより、量産環境でも安定した再現性と長期信頼性を確保しています。
車載分野での用途
ECU間接続:基板to基板コネクタで複数枚の基板を直交接続する際に位置ずれを吸収。

車載カメラモジュール:筐体組立誤差を吸収し、光学部品と電気コネクタの両立を可能に。

まとめ
フローティングコネクタとは、わずかな可動性を持たせることで組付け誤差や応力を吸収し、信頼性を高めるコネクタです。
車載分野では、ECUやカメラなど高密度実装が求められる部品に多く用いられ、量産性と長期信頼性を両立する重要な技術となっています。