自動車の電気的システムにおいて、電子モジュール、センサー、アクチュエーター、その他のデバイス間を接続するために使用される電気的コネクタを車載コネクタと定義します。
車載コネクタは自動車電装システムにおいて、電力、信号(データ)を伝送し、異なる電子機器間の相互通信や協調作業を実現する重要な役割を担っていますが、
「車載条件」という耐高温性、耐振動性、耐腐食性などの特性を持つ事で、自動車の過酷な環境でも安定して動作するように設計されています。
車載電気システムの安定性、信頼性、安全性を確保するため、自動車用コネクタは一連の厳しい規格と仕様を満たす必要があります。
一般的な車載用コネクタの標準規格を以下に示します。
規格名 | 概要・特徴 |
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ISO規格 | 国際標準化機構による規格。ISO 8859シリーズなどがあり、性能要件や試験方法を定義している。 |
SAE規格 | 米国自動車技術者協会による規格。SAE J2030、J2031などがあり、設計・性能・テスト要件を網羅している。 |
USCAR規格 | 米国自動車研究評議会による規格。USCAR-2、USCAR-25などがあり、物理的特性や環境適応性を規定している。 |
JASO規格 | 日本自動車技術会による規格。JASO D 611などがあり、日本国内で広く使用される。 |
DIN規格 | ドイツ規格協会による規格。DIN 72552などがあり、欧州車に多く採用される。 |
SAE J1772 | 電気自動車用の充電コネクタ規格。北米で広く使われ、CCS(Combined Charging System)にも対応している。 |
Open Alliance TC2 | 車載Ethernetの通信規格。高速通信(100M~)に対応し、厳しい伝送特性・クロストーク特性が求められる。 |
国際規格の役割
・互換性の確保:異なるメーカー製ユニットの互換性を確保し、サプライチェーンの効率化とレジリエンスを実現
※「異なるメーカー間でのコネクタを物理的嵌合互換」を保証するものではありません。
メーカーごとに設計思想や品質保証の基準が異なるため、異なるメーカー製品同士の嵌合は、電気性能や信頼性の観点から現実的ではありません。
・安全性の向上:高温、振動、湿気、腐食といった車載環境に耐えるための厳格な試験条件を規定し、コネクタの長期的な安定性を保証します。
・品質の標準化:国際規格品の採用により製品品質が安定し、不具合やトラブルリスクが低減。
・車載ネットワークの進化:CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)の進展に伴い、Ethernetなどの高速通信に対応するコネクタの標準化も急速に進んでいます。
標準規格対応製品具体例 ~USCARへの登録~
FAKRAコネクタ
FAKRAコネクタは 2004年に ISO 20860-1/-2 として国際規格化され、さらに北米の自動車業界標準である USCAR-17/-18 にも採用されています。
HFM®コネクタ
次世代の小型同軸コネクタである HFM(High-speed FAKRA Mini) は、オープンインターフェース化を目的にUSCARへ登録され、線径φ3.6以下に対応した小型同軸コネクタ規格 USCAR-49(2022年発行) に適合しています。
さらに、USCAR-49におけるリファレンシャルコネクタとして位置付けられており、業界の基準モデルとして参照されています。
RosenbergerHSD®コネクタ
高速差動データ伝送(LVDS)用途で広く利用される HSD(High-Speed Data) コネクタも、オープンインターフェース化を目的にUSCARへ登録されており、差動伝送システムにおける標準規格の一つとなっています。
H-MTD®コネクタ
次世代差動コネクタである H-MTD(High-speed Modular Twisted-pair Data) も同様に、オープンインターフェース化を目的にUSCARへ登録されています。
また、OPEN Allianceのリファレンシャルコネクタとしても採用されており、車載Ethernet規格における基準インターフェースとして位置付けられています。
まとめ
車載コネクタの国際規格は、共通基盤の確立・安全性と信頼性の担保・品質の均一化・技術進化への対応を目的として整備されています。
これらの規格に準拠することで、自動車業界全体として安定した品質と信頼性を確保することが可能になります。
ローゼンバーガーは、これらの規格団体に参画し、スペックの制定に大きく貢献してきました。
また、各国際規格やOEMスペックに準拠したコネクタを幅広く提案し、世界中の自動車メーカーやサプライヤーに採用されています。