ライトアングルコネクタ(Right Angle Connector)とは、接続方向を基板やケーブルに対して直角(90°)に曲げた構造を持つコネクタを指します。
ストレート型が軸方向にまっすぐ信号を通すのに対し、ライトアングル型は限られたスペースでの実装や配線取り回しを容易にするために用いられます。

特徴
・省スペース性
基板上や筐体内部の高さ制約がある場合に有効。
・配線の自由度向上
ケーブルを基板に対して横方向に引き出せるため、ハーネスの取り回しが容易。
・基板設計の柔軟性
直角に信号ラインを折り曲げることで、基板レイアウトやモジュール配置に自由度を持たせられる。
車載でのライトアングルコネクタの用途
・ECU内部:基板to基板や基板toケーブル接続で、スペース効率を高めるために採用。
・カメラ・レーダーモジュール:筐体の薄型化や光学部品との干渉回避のために使用。
・インフォテインメント機器:ディスプレイや制御基板の接続部分で、筐体デザインに合わせたレイアウトが可能。
技術的留意点
信号劣化
直角曲げにより、インピーダンスの乱れや反射が発生しやすくなるため、高速信号用途では内部構造に工夫が必要。
<直角曲げ部での現象>
インピーダンスの乱れ
伝送路(同軸や差動線路)は、幾何形状が一定なら常に一定の特性インピーダンス(例:50Ω、100Ω)が維持されます。
しかし、直角に曲がる部分では以下のような乱れが生じます:
– 内側の導体 → シールドとの距離が近くなり、静電容量が増加 → インピーダンス低下
– 外側の導体 → シールドとの距離が広がり、インダクタンス増加 → インピーダンス上昇
これにより局所的にインピーダンスが不連続になります。
反射の発生
インピーダンスが不連続な部分では、信号の反射が起こります
この反射が「跳ね返り」と表現される現象で、Sパラメータでいうと S11(反射係数)が増大します。
高周波で顕著になる理由
数MHz程度の低周波では波長が長いため、曲がり部の影響は無視できる場合もあります。
しかし数GHz以上の高速信号では、曲がり部が波長に対して無視できない大きさとなり、性能への影響が大きくなります。
機械的強度
基板に対して横方向の力が加わるため、はんだ接合部や端子の補強が重要。
熱膨張ストレス
基板実装時、温度サイクルによる応力集中が起こりやすく、設計段階でのシミュレーションや信頼性試験が不可欠。
ローゼンバーガーの車載コネクタ(例:FAKRA、HFM®、RosenbergerHSD®、H-MTD®など)では、ストレート型とライトアングル型の両方がラインナップされています。
特に高速伝送用の同軸・差動コネクタにおいては、ライトアングル設計でもインピーダンス制御を維持できるよう最適化されており、狭小スペースでも安定した高周波性能を実現しています。
まとめ
ライトアングルコネクタとは、接続方向を90°に変えることで省スペース化・配線自由度の向上を実現するコネクタです。
一方で、信号品質や機械的強度に配慮した設計が不可欠であり、車載用途では特に厳しい評価基準に基づいて採用されています。
ローゼンバーガーは、ストレート型とライトアングル型の両方を提供し、限られたスペースでの高信頼・高周波伝送をサポートしています。